「俺は、あんたが大好きだ」
「・・・・・・・・・・あん?」
突然発した凌統の言葉に、愛刀の手入れをしていた甘寧の動きが止まった。
「凌統・・・お前ェ─────頭イカれちまったんか」
床に座り込んではいるが、今にも全力で後ずさりしそうな勢いである。
その不審そうな眼差しには、若干怯えた色も浮かんでいた。
「違うっての!!!・・・今日は四月馬鹿とかっつって、虚言で話す日なんだってさぁ」
「へー」
甘寧が安堵したように床に武器を置き、ゆっくりと腰を上げる。
先刻までとはうって変わり、普段の甘寧らしい表情に戻っていた。
「ってこたァ、お前ェが言う『大好き』は『大嫌い』ってことか」
「ま、そーゆーことだね」
そう言う凌統は何故かしたり顔だった。ふーん、と甘寧が暫らく何か考え込み。
「─────じゃ、俺もお前ェが『大好き』だ」
「・・・・・・・・・・へ」
間が抜けた声を上げてしまい、凌統は言葉に詰まる。
そんな言葉で返されるとは思ってもみなかった。いや、実際はただ復唱しただけなのだが。
不真面目で飄々としていて、常日頃喧嘩ばかりしている相手が、突然満面の笑みをつくって『大好き』なんて口にするものだから。
「・・・・・あんたさぁ、ホントに逆の意味のつもりで言ってん─────」
赤面する凌統の口を、何かが塞いだ。
それが甘寧の唇だと気付くまでに、数秒かかり。
「─────んっ、バっ!!!!!」
ただでさえ真っ赤な凌統の顔が、さらに赤みを増す。
咄嗟に甘寧の胸を押しのけるが、まだ顔は目の前にあるままで。
「なぁ・・・こっから続き、していいか」
「・・・・・やなこった」
「あ?そりゃぁ、どっちの意味だ?」
「─────さあね」